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再考『陰翳礼賛』

少し日は過ぎてしまいましたが
7月30日は作家・谷崎潤一郎の命日でした。
でした、とはいっても私自身、ツイッターなどの投稿をみて
当日知ったのですが、、、



そこで、ワールドカップ終了とともに姿を消した
「にわかサッカーファン」ならぬ
「にわか谷崎ファン」
として本棚の奥に眠っていた(読みかけの)彼の名著
(わたしが唯一拝読した事のある谷崎作品でもある)

『陰翳礼賛』

陰翳礼賛

を改めて読了しようと再読しました。



「羊羹」のくだりはあまりにも有名なので
読んだ事のない方でもそこだけ知っている、というケースも
あるのではないでしょうか。

この書籍はタイトルのとおり
あらゆるものの「陰翳」について様々な視点から考察されたものです。
紙、菓子、建築、絵画、女性、そして果てはトイレまで。



私自身がとても印象に残ったのは
以下の部分。少し長いですが引用します。

案ずるにわれわれ東洋人は己れの置かれた境遇の中に満足を求め、
現状に甘んじようとする風があるので、暗いと云うことに不平を感ぜず、
それは仕方のないものとあきらめてしまい、光線が乏しいなら乏しいなりに、
却ってその闇に沈潜し、その中に自ずからなる美を発見する。
然るに進取的な西洋人は、常により良き状態を願って已まない。
蠟燭からランプに、ランプから瓦斯燈に、瓦斯燈から電燈にと、
絶えず明るさを求めて行き、僅かな蔭をも払い除けようと苦心をする。



谷崎は、東洋人を現状に甘んじる妥協の民族だと評し
一方で西洋人は進取的で意欲的であると言っています。
また、この後の章でも東洋人を「怠け者」であると語ります。

そしてその西洋と東洋との気質の違いこそが
「陰翳」に対する美意識の違いに表れているのだと。
 

進取的で意欲的な姿勢は経済の発展を促し
経済の発展は都市の光の明るさに比例します。

今では、世界の主要都市=経済都市は世界中どこに行っても
煌々と明るく輝いている印象を受けます。
経済の指標、とでも言うのでしょうか。

谷崎がこの本を著したのは昭和8年。
こののち、日本は大戦に敗れ、戦後復興によってまた大きな変化を迎えます。
敗戦の悔しさからでしょうか。
急激な経済成長を遂げ、今ではむしろ「日本人は働き過ぎ」だと言われています。

谷崎の「東西観」が正しいとするならば
西洋化した日本からは出版当時よりもさらに
陰翳が姿を消したのではないでしょうか。



そして今、世界が大きな経済不安に包まれています。
日本は第2の経済都市の座を中国に譲ろうとしています。

経済成長のタイミングで都市に過剰な光がもたらされるならば
今このときこそが美しく慎ましく適正な光について
(経済について、というマクロの視点ではなく
家計を危ぶんで、というミクロの視点で)
個人個人が考えるときなのかな、と思います。





1度、食卓の電気を消してろうそくを灯して
夕食を食べてみました。
実は、火の灯りや太陽の光は
人を最も美しく見せ、食べ物をおいしそうに見せます。
(少し難しい言葉で「演色性」といいます)
光の色ももちろんですが、自然な陰翳が生まれることにも因るのかもしれません。



必要なところに必要なだけの光を灯す。

やってみるとすごく自然で、当たり前のことのような気がします。
そこに灯る灯りが、自分で作ったものならばなお
生活は豊かなものになると思います。



と、ちょっとした感想文のつもりが
長文な上に少し固い文章ですが
たくさん感じるところのある深い本なので
皆さん、ぜひ読んでみてください。




きっと羊羹が食べたくなりますよ(笑)
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Author:手づくりライティング
「手作りの照明を広めよう!」をテーマに制作方法やアイデアを掲載していきたいと思います。
『Lighting by Yourself-手づくりライティング』という書籍を出版しました。

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